●DCS・SCADA・PLC計装の違いが知りたい。
●それぞれの意味は?
●プラントの制御監視がわからない。
この記事はそんな方へ向けて書いています。
この記事を読むことでDCS・SCADA・PLC計装の特徴・比較、概要がわかります。
はじめまして。
管理人の私(ナナシ)と申します。
システム選定に失敗したくない方は本記事をぜひ最後までご覧ください。
著者のプロフィール
私は医薬・化学プラントの案件において、DCSの計画、基本設計、実施設計、工事、保全に5年以上関わっています。
転職前はエンジ会社的な立ち位置で、転職後は保全の立場で関わっています。
「1級計装士」の管理人のプロフィール
- 東証一部大手メーカー(ホワイト企業)勤務
- 資格のおかげで今の会社へ異業種転職
- 工場(プロセス製造)の電気計装担当向け有益情報発信
- 保有資格:電気工事士・計装士・電験3種など独学取得
- Twitterフォロワー 2,150以上
プラントでのDCS・SCADA・PLC計装・PLC+タッチパネルの違い(制御監視システムの比較表)
プラントでのDCS・SCADA・PLC計装・PLC+タッチパネル比較表(制御監視システムの比較表)
比較項目 | DCS | SCADA | PLC計装① | PLC計装② | PLC+タッチパネル |
---|---|---|---|---|---|
想定メーカー | 横河電機 | 横河電機 | 横河電機 | 三菱電機 | 三菱電機 |
想定製品 | CENTUM | FAST/TOOLS | STARDOM計装 | MELSEC計装 | MELSEC+GOT |
制御 | ◎ | △ | ○ | ○ | ○ |
監視 | ○ | ◎ | ○ | ○ | △ |
制御監視 対象の規模 | 大規模 | 大規模 | 中・小規模 | 中・小規模 | 小規模 |
制御周期 | ○ | ※ | ◎ | ◎ | ◎ |
冗長化 | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ |
通信インターフェース /オープン化 /接続製 | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ |
操作性 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ |
コスト | △ | ○ | ○ | ○ | ◎ |
外注先 | 代理店 | 代理店 | 代理店 | 制限無し | 制限無し |
※直接機器を制御する(動かす)のは下位の制御システムのため、そちらの制御周期となる。
DCSとSCADAとPLCの違いは、DCSとPLCは機械を目的通りに動かすこと、つまり制御することが主機能であり、SCADAは中央監視装置としてDCSやPLC、その他設備の情報(測定値、警報、異常、実績等)をわかりやすく見える化することです。
DCSとPLCは制御機能がメインです。SCADAは監視機能がメインです。
DCS・SCADA・PLC計装の制御機能の違い
連続プロセス制御(PID制御、カスケード制御等)、シーケンス制御、高度制御(上位制御システム)、工程管理の機能が充実していることから、DCSが優れていると思います。
しかし、近年はPLC計装でもDCSに匹敵する機能を備えています。
SCADAは制御機能がほとんどありません。(下位の制御システムが機械の制御を行う。)
SCADAは積極的に制御しない。
DCS・SCADA・PLC計装の監視機能の違い
パソコンを操作監視端末として使えることから、DCS、SCADA、PLC計装が優れています。
SCADAは監視専門で、画面のデザイン重視のため、見やすいです。
DCS、PLC計装は昔ながらの画面といった感じがします。(慣れている人には問題ないレベル)
DCS・SCADA・PLC計装・PLC+タッチパネルの制御監視対象の規模の違い
稼働率、冗長化、入出力点数、メンテナンスなどの観点から、DCSが大規模プラント向けです。
それに対して、PLC計装は中・小規模向けです。
この記事でSCADAは横河電機のFAST/TOOLS を想定しているため、大規模向けとしていますが、中・小規模向けのSCADAもあります。
PLC+タッチパネルは、現場の機器を現場で作業者が制御監視するため、小規模と考えました。
規模の違いでシステムを使い分ける。
DCS・SCADA・PLC計装の制御周期の違い
PLCを利用しているものは制御周期が短く、ミリ秒単位で高速に機械を動かすことができます。
それに対してDCSは、応答が遅い制御対象(連続製造プロセス)を確実に秒単位で制御するというコンセプトのため、制御周期が長いです。
SCADAの場合、直接機器を制御する(動かす)のは下位の制御システムのため、そちらの制御周期となります。
PLCは高速な制御が得意、DCSはゆっくりなプロセスの制御が得意
DCS・SCADA・PLC計装の冗長化の違い
DCSは絶対に止めてはいけないプラント向けに開発されていますので、冗長化のグレードが高く、様々な部品が冗長化可能、高耐久な部品、通信の冗長化、オンラインメンテナンス可能、自己診断機能の充実、複数の操作監視端末など、徹底的に稼働率を上げる冗長化の工夫がされています。
PLC計装はDCSに比べると冗長化のグレード・方式、冗長化できる部分、オンラインメンテナンスができる部分が限られます。
SCADAはサーバの冗長化が可能です。
DCSは冗長化が盛りだくさん
DCS・SCADA・PLC(計装)の通信インターフェースの違い
三菱電機のPLCは通信インターフェース(接続性)やオープン化に積極的で、様々な製品と通信が容易に行えます。
DCS及び横河電機製品は、三菱電機のPLCに比べて、対応している通信インターフェースは少ない印象です。
SCADAは信号を取り込むためのシステムですので、対応インターフェースは豊富です。
通信インターフェースはPLCが有利
DCS・SCADA・PLC計装・PLC+タッチパネルの操作性の違い
DCS・PLC計装・SCADAは監視操作端末にパソコンが利用されているので、マウス・キーボード操作が可能です。
画面もプラントを操作・監視するように作られています。
ダッシュボードのように必要な情報が一画面にまとまっています。
タッチパネルは、手で操作するので、好き嫌いがあると思います。
また、画面が小さいため、色んな画面を行ったり来たりして、情報を確認する必要があります。
ある程度のプラントは操作やデータ記録の点でパソコン(マウス・キーボード)で管理したいですね。
DCS・SCADA・PLC計装・PLC+タッチパネルのコストの違い
構築する規模(ソフトウェア制作、入出力点数)やハードウェアのグレードに比例します。
DCSが一番高く、PLC+タッチパネルが安くなります。
DCSまでは必要でないプラント(一時停止が許容できるプラント、定修などで予防保全ができるプラント等)はPLC計装の方がイニシャル・ランニングコストが安くなると思われます。
DCSはコストが高い
DCS・SCADA・PLC計装の外注先の違い
DCS・SCADAはメーカー代理店のエンジニアのみがエンドユーザからの依頼でDCS新設・改造ができます。
外注見積が高価になりがちです。
エンドユーザにてDCSの制御・ソフトを内製化(エンジニアリング)するプラントもあります。
PLC計装(三菱電機製など)はPLCを扱える会社であれば、対応可能なため、DCSほど、外注は高くならないと思われます。
Q&A
制御とは機器を思い通りに動かすこと
機器を思い通りに動かすこと。
センサーの計測値を入力し、演算を行い、バルブ等の機器へ出力する。
演算とは、PID制御、ON・OFF制御、シーケンス制御、工程管理などがある。
監視とはセンサーの計測値、機器の異常などを画面表示・保存すること
センサーの計測値、機器の異常などを画面表示・保存すること。
計測値は時系列グラフ(トレンド)のように視覚的にわかりやすい形で表示する。
DCSは制御も監視も得意です
DCSとは分散型制御システムのこと
DCSとは、Distributed Control Systemの略で、日本語で分散型制御システムといいます。
ディジタル計装制御システムの一つでコントローラと呼ばれる制御装置に計算機・マイクロプロセッサを取り入れ、その高度な機能を利用してプロセス制御を行います。
1970年代に半導体技術の発展によりマイクロプロセッサの性能が飛躍的に向上した結果、DCSは登場しました。
↓DCSについての概要、構成、特徴、用途、メーカー、その他疑問がわかる記事です。
本記事が役に立った方は、上記もクリック推奨
動画で学ぶ:DCSとは?メリット・デメリット
SCADAとは情報を一箇所で集中監視するシステム
もともとのコンセプトは、下位の制御システム(PLC等)に対して、SCADAは監督的に指示を出したり、データを取得したりします。
Supervisory:監督的に
Control:制御
And:および
Data:データ
Acquisition:取得
実際、Control:制御機能はあまり無く、Acquisition:取得の機能がメインです。
分散して配置された制御システムの情報を一箇所で集中監視したいときにSCADAを採用します。
逆に、SCADAだけあっても機器の制御(PID制御、シーケンス制御)がほぼできませんので、下位に制御システムを1個又は複数設置する必要があります。
パソコンやサーバにSCADA用ソフトが入っていると考えるとわかりやすいです。
SCADA
Wikipedia
(Supervisory Control And Data Acquisition の略。読み方はスキャダ)は、産業制御システムの一種であり、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御を行う。
対象プロセスは、以下のような生産工程やインフラや設備に関するものである。
製造、生産、発電、組み立て、精錬などを含む工業プロセスであり、連続モード、バッチモード、反復モード、離散モードなどがある。
水処理、水道、排水、下水処理、石油やガスのパイプライン、送電網、大規模通信システムなどのインフラ。ビルディング、空港、船舶、宇宙ステーションなどの設備。
空調、アクセス、エネルギー消費などを監視し制御する。
SCADA システムは一般に次のようなサブシステムから構成される。
ユーザインタフェース – 対象プロセスのデータを人間のオペレータに提示し、人間のオペレータがプロセスを監視し制御できるようにする機構。
監視制御(コンピュータ)システム – プロセス上のデータを収集し、プロセスに対してコマンドを送る。
遠方監視制御装置 (RTU:Remote Terminal Unit) – プロセス内に設置されたセンサと接続し、センサの信号をデジタルのデータに変換し、そのデジタルデータを監視制御システムに送る装置。
通信基盤 – 監視制御システムと遠方監視制御装置 (RTU) を接続する。
SCADA と分散制御システム (DCS) を混同している場合がある。
一般に SCADA システムはプロセスを調整するが、実時間で制御はしない。
実時間制御という話は、新たな通信技術によって高信頼な低レイテンシで高速な通信が広域で可能になるにつれて、焦点がぼやけてしまう。
SCADA と分散制御システム (DCS) の違いは主に文化的なもので、ほとんど無視できる。
通信基盤が発達するにつれて、両者の違いは薄れる傾向にある。
システムの概念
SCADA という用語は一般に、1つのサイト全体や地理的に分散したシステム群を集中的に監視制御するシステムを指す。
制御のほとんどは遠方監視制御装置 (RTU) またはプログラマブルロジックコントローラ (PLC) が自動的に行う。
ホストの制御機能は監督的な介入や優先的なものに限られることが多い。
例えば、PLCが工業プロセスにおける冷却水の流量を制御する場合、フィードバック制御ループ自体はRTUやPLCでほぼ完結している。
これに対し、SCADAシステムはそれらループの状態を監視するシステムという位置づけで、具体的には、SCADAシステムによりオペレータが流量の設定値を変更出来たり、警報発生条件(不正な流量や高温)を変更出来たり、現在の状態をオペレータに対して表示し記録する機能を提供する。
データ収集はRTUやPLCのレベルで行われ、必要に応じてSCADAに送られる。
SCADAでは、収集されたデータを監視室のオペレータが見て監督的決定を行えるような形にして提示する。
データは普通のデータベース管理システム上に構築された履歴システムにも送られ、傾向などの分析に使われる。
モニタリング設備、中央監視設備、電力監視設備のように目的や収集データ種別に応じて、呼び方が変わります。
PLC計装とはPLCとHMIで制御監視するシステム
PLC計装はPLCとHMI(ヒューマンマシンインターフェース)により構成されます。
PLCはもともとシーケンス制御を行うために作られたのですが、シーケンス制御にとどまらず、PID制御などのプロセス連続制御機能も充実し、HMIもDCSに匹敵するようになりました。
DCSと同じグレードではないのですが、冗長化も可能です。
とても有益な参考記事・・・DCSリプレースにおけるPLC計装の選定視点と導入評価(住友精化社株式会社)
今後、どの企業でもDCSとPLC計装のどちらを選定するかという議論がなされると思いますが、私は今後すべてがPLC計装に取って替わるとは思っていません。
DCSリプレースにおけるPLC計装の選定視点と導入評価(住友精化社株式会社)
DCSでなければ出来ない大規模制御や高機能制御があると思っておりますが、今まで仕方なくDCSを採用していた中・小規模プラントなどは、今後、PLC計装を視野に入れ、それぞれのプラントに合った制御システムを模索して行かなければならないと思っております。
今回の導入事例がその模索のひとつの参考例となれば幸いです。
小規模なプラントの場合、PLC計装も選択肢として挙がります。
しかし、製造品目やプロセスの特性上、高信頼性・長期安定性などDCSのグレードが必要で、操作監視の環境は直感的・慣れているものを使いたい場合、小規模プラント・設備向け生産制御システムCENTUM VP Basicなども選択肢に入ってきます。
大規模向けのDCSよりコストは抑えられるとのこと。
中小規模向けのシステムには、PLC計装や中小規模DCSがある
PLCとはプログラマブルロジックコントローラ
プログラマブルロジックコントローラ(英: programmable logic controller、PLC)は、リレー回路の代替装置として開発された制御装置である。
Wikipedia
プログラマブルコントローラとも呼ばれ、一般的にシーケンサ(三菱電機の商品名であるが登録商標ではない)とも呼ばれる。
電磁石と接点で構成されたリレーを用いた制御回路が昔は主流でした。
今は複雑な制御回路(生産工程に関係するような回路、入出力点数が多い回路)はPLC(ソフトウェア)、簡単な制御回路(電動機の運転停止制御、液面によるポンプの制御など)はリレー回路(ハードウェア)を用います。
PLCはもともとはリレー回路の代替として開発された
リレーシーケンスとは電磁リレーをスイッチとして利用し制御する方式
有接点シーケンス、リレーシーケンス(Relay Sequence)とも呼ばれ、電磁リレーをスイッチとして利用し制御する方式である。
Wikipedia
表現方法としてシーケンス図が用いられる。
負荷容量が大きいことや電気的ノイズに安定なことなどから、電動機の制御に応用される。
昭和30年代から昭和50年代までは、リレー回路によって構成されたシーケンス制御回路が普通であった。
タッチパネルとは画面に設備情報を表示し、設備の簡単な操作・制御を行えるシステム
生産現場の情報をタッチパネル画面に表示します。
画面内のボタンを手で押すことで設備情報を表示したり、画面を切り替えたりできます。
生産現場では三菱電機のGOTシリーズが有名です。
計装とは? 計装士とは? 勉強法は?
【計装を画像4枚で図解】
— ナナシクチナシ@電験3種・エネ管・1級計装士・応用情報・建築設備士・第二種電気工事士 (@nanashi_kuc) April 21, 2022
計装が生み出す価値を知ってもらいたい pic.twitter.com/RGxI73j9EZ
計装士の1級と2級の違いは?
計装・制御に関連する書籍
工業計測と制御の基礎―メーカーの技術者が書いたやさしく計装がわかる
著者は横河電機(株)出身です。安心感がありますね。
本書は、プロセス制御(PA)とファクトリオートメーション(FA)で使用される応用計測、制御の入門書である。
「計測と制御」の理解に必要な基礎的共通事項に重点を置き、現場経験と応用事例を“解説”として折り込み、また現場で制御を経験していない読者に身近な一般現象と関連させて理解を深めるよう工夫している。
制御理論や詳細なプロセス計装は他書に譲り、現場でのシステム設計、機器選定や改善、保守に役立つノウハウの理解と応用に主点を置いた。
また、現場への機器設置方法や最適制御と各種高度制御の考え方を例を交え紹介している。
機器断面図などのイラストが多く、わかりやすい本で勉強したい人におすすめ
計装屋さんに必要な知識が一通り学べます
計装メーカが書いたフィールド機器・虎の巻―差圧・圧力伝送器/電磁流量計/渦流量計
本書では、プロセス計測について、原理原則よりも、設計上の注意、選定基準、設置上の注意、アプリケーション事例、トラブル事例など体験を活かし、現場に密着した内容を出来るだけ多く盛り込んだ。
またテストの内容やデータも随所に織り込んであり、現場でのトラブルなどで困ったとき、本書をひもとけばヒントが得られる「虎の巻」として、できるだけの工夫をした。
また、これらセンサに係わる主要関連法規や規格についてもプラント計装エンジニアや機器を使用する側の立場に立って巻末に纏めた。
流量計に特化した本。
流量計をこれから勉強する人、さらに知識を深めたい人におすすめ。
職場で一番流量計に詳しくなれます。
プロセス制御システム
本書では、プロセス制御システムの設計の基礎から応用までを、化学工学を専攻していない人にも、順に学んでいけるようにまとめた。
特に、化学プロセスを具体的対象に、物理モデルの構築の仕方をはじめ、プロセス制御の分野から提案されたモデル予測制御や内部モデル制御の基礎的な理論およびそれらの理論と従来のPID制御との関連についても述べている。
プロセス制御システムの設計の基礎から応用までを解説。
特に化学プロセスを具体的対象に、物理モデルの構築の仕方をはじめ、モデル予測制御や内部モデル制御の基礎的な理論等と従来のPID制御との関連について述べる。
おわりに:比較表でわかる! DCS・SCADA・PLC計装の違いとは?制御監視システムを解説(5選比較)
この記事ではDCS・SCADA・PLC計装の特徴・比較、概要を説明しました。
今日からプラントの制御監視マスターですね。
コメント
コメント一覧 (1件)
まだまだ若いですね。若いからダメということではないですが、若い分の分量の情報で、そういうものかと覚える方法としては良いものだと思います。
失礼しました。私は、旧財閥系の某化学会社に勤務しておりまして、国内工場および、シンガポールや中国でのプラント建設に携わり、計装ループ的には4万LOOP程度を処理し、40~50プラント程度の建設をした経験上、本、資料はよくはできているけれども、専門的には更なる経験の獲得と安定制御に向けての技術向上をお願いします。